新築一戸建てを20代のうちに建てる。近年の住宅ローンの低金利化により、年収が低く自己資金が少ない人でも容易に家を建てることができるようになってきています。このため、昔に比べて20代からでも家を買うことが簡単になっています。
今回は、
- 20代で家を買うことができるのか?
- 20代で家を買うことのメリットやデメリット
- 20代で家を買う方法
などについてお伝えします。
20代で家を買うメリットとデメリット
住宅ローンの低金利化により20代でも家を購入するのが簡単になってきているとはいえ、実際には住宅購入者の大半を占めるのは30代です。
住宅金融支援機構の「民間住宅ローン利用者の実態調査」によると、2016年度(第1回)民間住宅ローンの年代別住宅ローン利用者調査は20代が全体の6.6%。30代が53.8%、40代が33.0%、50代が6.6%となっいます。
民間住宅ローン年代別利用者割合 | |
---|---|
20代 | 6.6% |
30代 | 53.8% |
40代 | 33.0% |
50代 | 6.6% |
民間住宅ローン利用者の実態調査より
フラット35利用者調査(第1回)は、20代が4.7%、30代が59.1%、40代が30.9%、50代が5.4%となっています。
フラット35年代別利用者割合 | |
---|---|
20代 | 4.7% |
30代 | 59.1% |
40代 | 30.9% |
50代 | 5.4% |
フラット35利用者の実態調査より
調査結果から30代から家づくりをはじめる人が多く20代の占める割合はかなり少なくなっているというのがわかります。
しかし、20代から家を買うのにはメリットもあるのも事実です。
住宅ローンは数十年に渡って返済していくものなので、安易に家を買うのは危険ですが、20代で家を購入するメリットとデメリットを把握した上で検討することが大切だと言えるでしょう。
ここでは、20代から家を買うメリットとデメリットをお伝えします。
20代で家を買うメリットとは?
20代で家を買うというのに不安を感じる人もいると思いますが、20代だからこそ得ることができるメリットがあります。
20代で家を買うと定年前に住宅ローンを完済できる
20代で家を買うメリットとしてまず挙げられるのが、住宅ローンの返済を早く始める分、早く返済を終えられるという点です。
20代前半で35年の住宅ローンを組んだとしても遅くとも60歳までには完済し終わります。20代後半でも65歳までには完済することになります。30代以降だと、35年後には定年の65歳を超えていることになり、働いて返すこともできず、老後資金の一部を住宅ローンのために切り崩さなければならない可能性が高いでしょう。
また、住宅ローンを組んだ当初の予測よりも収入が増えた場合には繰上返済をして早く完済したり、土地の価格が上がれば途中で売却して住替えたりするなど、幅広い対応が可能です。
団体信用生命保険で生命保険の代わりとすることができる
家族が居て、一家の大黒柱として働いているのであれば万が一自分が死んだ後の家族の心配もあります。通常であれば生命保険に加入して、仮に自分が死んだ後も家族に負担が掛からないようにしますが、住宅ローンを組むことで生命保険の代わりとすることもできます。
住宅ローンには、「通常団体信用生命保険」といって借りている人が亡くなった場合に残りのローンを0円とすることのできる保険が付いています。
これは、借金が0円になるというだけでなく、家族に住む家を残すこともできますし、いざとなったら売却してまとまった資金を得ることもできるので、若い内から掛け捨ての生命保険に加入するよりずっとお得だと言えるでしょう。
月々の賃貸に支払う無駄な家賃を少なくできる
賃貸に支払う家賃は、借りているマンションや家の大家さんに支払っているものですが、住宅ローンを組んで家を買った場合、毎月の支払は自分の資産のための支払いとなります。
月々支払っていた家賃がなくなり、家賃の支払いではなく自分の資産のための支払いに変わる。
できるだけ早く家を購入して自分の資産のためにお金を払った方が、家賃という他人に支払うお金を少なくすることができます。
20代で家を買うデメリットとは?
家を買うことで得られるメリットも多い20代は、出産や転勤、転職、もしくは離婚などまだ不確定な要素が多いなど、20代で家を買うのにはデメリットもあります。
生活の大きな変化で返済が厳しくなる可能性がある
どの年代で家を購入してもその先のことは分からないのは当然ですが、20代の場合子供が生まれたり、転勤したり転職したりするなど生活が大きく変わる人生の転機が起こる可能性が高いと年代といえるでしょう。
転勤で勤務先が変わり購入した家から通うことのできない職場になってしまった場合、住宅ローンの支払いと単身赴任による家賃との2重払いになる可能性もあります。子供が生まれれば生活費などの出費が増えます。転職や離婚が起こった場合は収入が減ってしまう可能性があります。
このような場合、家を所有したまま誰かに貸し出して家賃収入を得たり、売却したりすること資金を得るなどで解決できる事も多いため、将来建てる家が売却したり貸したりできる物件かどうかも検討材料に入れると良いでしょう。
20代では高予算の良い家は買いづらい
20代で家を買う場合、まだ年収は低いことが多く30代や40代で家を買うより安いものしか買えない可能性が高いでしょう。
転勤や出産などで生活が大きく変わる可能性も高い20代の場合、特に将来売却したり貸し出したりできることを考えて家を建てることが良いのですが年収が低いとそうした良い物件を購入することは難しくなります。
借りグセがついてしまう人もいる
住宅ローンは家賃と似たようなものなので忘れがちなのですが非常に高額な借金です。
住宅ローンを利用して簡単に住宅を買えてしまう体験を20代のうちにしてしまうと、結婚式費用や出産費用、自動車の購入費用などまとまった資金が必要な際に地道にお金を貯金して買うのではなく、ローンで借りれば良いという借りグセがつかないようにしなければなりません。
20代年収400万円で家を買う予算は足りるのか?
20代で家を購入するとなると、多くの場合まだ年収の少ない内に購入することになります。では、年収400万円程度であれば住宅ローンでいくらくらい借入することができるのでしょうか。ここでは、20代年収400万円で住宅を購入する場合の目安の予算についてお伝えします。
住宅ローンの借入可能額は返済負担率と審査金利で計算できる
年収400万円で住宅ローンをいくら借りられるか、ですが、この借入可能額は住宅ローンを利用する金融機関によって異なります。
年収に占める年間の住宅ローン返済額である返済負担率は年収400万円以上で35%程度に設定されている金融機関が多いです。
この場合、年間140万円、月々11.7万円程度まで返済に充てていい計算となりますが民間の金融機関ではこの月々返済額の計算を実際の金利ではなく「審査金利」で計算することが多くなっています。
例えば、審査金利が3%に設定されている金融機関では年収400万円で3,031万円まで借入できる計算となります。
フラット35であれば4,000万円程度の借入も可能
一方、住宅金融支援機構のフラット35では審査金利が実際の金利と同じ金利で設定されているため、借入可能額も大きく計算することができます。
例えば、実際の金利が1.1%であれば審査金利も1.1%となり、年収400万円で4,065万円まで借入が可能となります。
意外と多く借入できると感じた方が多いのではないでしょうか。
借入額は「毎月いくら返せるか」から考えよう
上記は計算上の数字であり、特に民間の金融機関では上記返済負担率や審査金利より厳しい基準を設けていることが多く、より少ない金額の借入額となることが多いです。
また、例え借入可能額が多くとも実際に借り入れる額は、実際に生活を送っていく上で「毎月いくら返せるか」から算出するようにするべきです。
年収400万円の人の場合、ボーナス等を除いた付きの手取り額は20万円程度の人が多いでしょう。ここでフラット35の借入限度額である4,000万円借りてしまうと月々11.5万円の返済となり、その他の生活費の一切を毎月8.5万円でやりくりしなければならず、現実的ではありません。
今の家賃などから比較して、毎月いくらまでなら返済に回せるかシミュレーションしてみると良いでしょう。
20代で家を買おうと思ってからの流れや返済スケジュール
20代で家を買うことに決めた場合、どのような流れで手続きを進めれば良いのでしょうか。
情報収集~住宅会社見学~購入申し込み(目安:1~3カ月目)
インターネットやチラシ、雑誌など住宅の情報を集めたら、実際に不動産会社や住宅会社に連絡して足を運んでみましょう。。
年収400万円であれば、フラット35で4,000万円程度借りられますが、実際には3,000万円程度までの物件にした方が良いでしょう。4,000万円であれば35年返済で月額11.5万円程度、3,000万円であれば35年返済で月額8.5万円程度となります。
中古住宅であれば条件を伝えて物件をピックアップしてもらい、できれば複数社の不動産会社で物件を見て回るようにしましょう。
新築住宅の場合、自分で1から住宅を建てる注文住宅と、完成した家を購入する建売住宅があります。
建売住宅や中古住宅の場合、見学して気に入った物件があれば買付申込書を提出し、注文住宅であれば気に入った土地を住宅会社に伝え、住宅会社にプランを引いてもらいます。
プランを引いてもらうのに申込金(1~10万円程度が多い)がいる会社もありますが、それ以外の行程はここまで無料で利用できます。
住宅ローン審査~契約~建物着工(目安:4~6カ月目)
物件を決めるのと前後して住宅ローンの審査を進めます。
住宅ローンの審査では運転免許証と健康保険証、源泉徴収票、物件資料(謄本や測量図など)を用意する必要があります。
なお、20代であれば奨学金や自動車ローンなど借入がある方もいるかと思いますが、他の借入がある場合は返済予定表を用意しておく必要があります。また、年収400万円であれば事前完済が条件となることが多く、その場合完済資金を準備する必要があります。
物件の契約前に事前審査を、物件契約後に本審査を受け、承認を得られれば物件購入に向けて進めることができます。
契約時には物件価格の1割程度を手付金として支払う必要があります。
手付金は、後で住宅ローンから手元に戻すことも可能ですが、この段階では手持ちの資金から支払う必要があります。
1割となると、例えば3,000万円の物件で300万円と高額になるため、支払いが厳しい場合は住宅会社や不動産の売主に相談して減額してもらうと良いでしょう。(もっと安い金額でも可能なことが多いです)。
建物完成~住宅ローン実行~引越し(目安:7~12カ月目)
注文住宅の場合、建物の着工から完成まで3~4カ月程度かかります。建物が完成すればいよいよ住宅ローンの実行となります。なお、建売住宅や中古住宅の場合ローンの承認後登記手続きをしてすぐに住宅ローン実行が可能です。
住宅ローン実行と同時に所有権は購入者に移りますので、その後はいつでも引越しできます。
住宅ローンの返済開始時期
住宅ローンの返済が始まるのは、一般的には住宅ローンを実行した次の月からとなります。
(金融機関によっては半年~1年程度返済を猶予できる場合もありますが、その場合完済も猶予した分だけ遅くなります。)
賃貸から引っ越す場合、1カ月~2カ月程度家賃と住宅ローンの支払いが重なる場合もあるので資金を用意しておくと良いでしょう。
返済が始まれば、毎月の返済日に住宅ローンの返済をしていくこととなります。
20代で家を買う場合、25歳で住宅を購入して35年の返済であれば60歳までの返済となりますが、29歳で住宅を購入して35年の返済であれば64歳での完済となります。
自分の職場の定年が64歳より前にあるのであれば繰上返済を検討すると良いでしょう。途中でお金が貯まれば繰上返済をしてまとめて資金を返しても良いでしょう。
繰上返済には、返済期間は変わらず、毎月の返済額を減らすことのできる返済額軽減型と、返済額は変わらず、全体の返済期間を少なくすることのできる返済期間短縮型の2つの方法があります。
子供が大きくなって毎月の返済額がきつくなった場合などは返済額軽減型を選べば良いですが、総支払金額がより少なくなるのは返済期間短縮型の方です。
なお、返済期間短縮型の場合、借入額や繰上返済する年によっても異なりますが、例えば3,000万円の借入をして、5年後に繰上返済をすると100万円で1年3カ月程度の短縮となります。
まとめ
20代の内から年収が低くとも家を買うことは可能です。20代で家を買うにはメリットもある一方、デメリットもあります。
住宅を買うことで家賃の総支払額を少なくすることもできますが、それだけを理由に購入を急ぎ、将来売却しなければならなくなり、大きなマイナスを出してしまっては元も子もありません。
20代で家を買うのであれば将来のライフプランの変化などを中心にしっかり検討するようにすると良いでしょう。